サルコペニア(筋肉減少症)の対策

サルコペニアの危険度を、まずはセルフチェックしてみよう

サルコペニアのリスクは、セルフチェックで簡易的に調べることができます。次の(1)~(3)の3つのセルフチェックで2項目以上該当した場合は、サルコペニアの可能性が高いと判断できます。

(1)指輪っかテスト

①両手の親指と人差し指で輪を作る。

指輪っかテスト

②利き足でないほうのふくらはぎの一番太い部分を、力を入れずに軽く囲んでみる。

利き足でないほうのふくらはぎの一番太い部分を、力を入れずに軽く囲んでみる。

指輪っかでふくらはぎが囲めてしまう人は、サルコペニアの有病率や新規発症リスクが高いことが分かっています。

サルコペニアの危険度

(2)開眼立脚位テスト

①素足で、滑りにくい床に立ち、両手を腰に当てる。
②立ちやすい側の足で立ち、もう一方の足を床から5cmほど上げ、立っていられる時間を計測する。
立っていられる時間が8秒未満の場合はサルコペニアの可能性があります。

開眼立脚位テスト

(3)5回立ち座りテスト

①ひじ掛けのないいすに座り、両手を交差して胸に当て、足は肩幅程度に開く。
②いすに座った状態から、反復して立ち座り動作を5回繰り返す。かかった時間を計測する。
→5回立ち座りする動作が12秒以上かかった場合はサルコペニアの可能性があります。

5回立ち座りテスト

サルコペニアは、整形外科や専門外来等で診断できる

サルコペニアは、整形外科やサルコペニア外来などがある医療機関で、高齢者(65歳以上)を対象に診断を行っています。診断はアジア・サルコペニア・ワーキンググループがアジア人の
握力は男性で28kg未満、女性で18kg未満、歩行速度は1秒間あたり1m未満が基準となり、握力か歩行速度のいずれかが値を下回る場合で、さらに四肢骨格筋量が低下している場合、サルコペニアと診断されます。四肢骨格筋量の低下は、正確には病院での測定が必要ですが、指輪っかテストを用いてもいいですし、下腿周囲長の低下の基準(男性34cm未満、女性33cm未満)を用いてもいいです。サルコペニアと診断された場合には、運動療法や栄養療法等を組み合わせて治療していきます。

運動と栄養による筋肉量・筋力アップで、サルコペニアを改善しよう

サルコペニアを改善するには、筋肉の量や筋力を増やすために、定期的な運動と栄養の摂取が大切です。以下のような運動や栄養がサルコペニアの改善につながります。

●運動……レジスタンス運動(筋力トレーニング)

サルコペニアの改善には、筋肉に抵抗(レジスタンス)をかける動作を繰り返し行う、レジスタンス運動が効果的です。レジスタンス運動とは、いわゆる「筋トレ」のことで、スクワットや腕立て伏せのような運動を指します。足の筋力向上のために、簡単にできるいすでの体操をご紹介します。座った時に足の裏が床に着く高さで、ひじ掛けがないいすで行いましょう。

・つま先とかかとの上げ下げ

①かかとを床につけたまま、つま先をしっかり上げ、2~3秒静止した後に下ろす。
②つま先を床につけたまま、かかとを上げ、2~3秒静止した後に下ろす。
③これを1セットとして、10セット程度繰り返す。

つま先とかかとの上げ下げ
・片足上げ膝(ひざ)伸ばし

①いすに深く腰掛け、体が後ろに反らないように気をつけながら、片方の膝を1回伸ばして下ろす。
②反対の足も同様に、膝を1回伸ばす。
③これを1セットとして、10セット程度繰り返す。

片足上げ膝(ひざ)伸ばし
●栄養……タンパク質・ビタミンD

タンパク質は筋肉をつくるために欠かせない栄養素です。サルコペニアの改善には、1日に体重1㎏あたり1.2~1.5gのタンパク質を摂ることが必要で、これは体重が60㎏の人なら72~90gほどを1日に摂る計算になります。
しかし、例えば高タンパク・低カロリーである鶏のささみを100g食べたとしても、そこに含まれているタンパク質の量は23g。1日量の1/3程度しか賄えません。無理なく摂るには、1日3食の中でバランスよく、肉や魚、卵、乳製品、大豆製品などから摂ることが大切です。特にお肉のタンパク質は良質なので積極的に食べましょう(ただし、腎機能が低下している場合は、高タンパク食で腎機能障害を引き起こす可能性があるため、医師に相談しましょう)。 ビタミンDはカルシウムと共に、骨をつくるために必要な栄養素として知られています。一方で、血中のビタミンDレベルが低い人は、握力や歩行速度などの身体機能が低いことや、40歳以上の日本人女性ではサルコペニアと骨粗しょう症の発症の間に強い関連があることが実験で示されており、ビタミンDが骨だけではなく筋肉(骨格筋)にも作用する可能性が考えられています。
ビタミンDはイワシやサケ、ウナギなどに多く含まれています。また、日光に当たると皮膚で合成されるので、適度な日光浴もおすすめです。

監修プロフィール
荒井 秀典先生
国立長寿医療研究センター 理事長 あらい・ひでのり荒井 秀典先生

医学博士。日本老年学会理事長、日本老年医学会副理事長、日本サルコペニア・フレイル学会代表理事他を務める。専門領域は、老年医学一般、フレイル、サルコペニア、脂質代謝異常。1984年京都大学医学部卒。91年京都大学医学部大学院医学研究科博士課程修了。91年京都大学医学部老年科助手、93~97年米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校研究員。2009年、京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻教授。15年、国立長寿医療研究センター副院長を経て、19年より現職。