前立腺肥大症

自覚症状のない場合も多い前立腺肥大症

前立腺は男性特有の臓器で、尿道を取り囲むように存在しています。形や大きさは栗の実によく似ています。子どもの頃はとても小さいですが、思春期の頃に急速に大きくなり、成人と同じ大きさになります。前立腺液という精液の一部を分泌する他、射精時に精液が膀胱に逆流するのを防ぐ働きもしていますが、まだ詳細が分かっていないことも多い臓器です。

前立腺がある場所

前立腺がある場所

前立腺肥大症の原因:男性ホルモンの減少がかかわっているとされる

前立腺は特に異常がなくても、30代後半くらいから徐々に肥大し始めます。これを「組織学的な肥大」といい、40代では40%に前立腺の組織学的肥大が見られます。その後、年齢と共にその割合が増加し、70歳では70%の人に見られるといわれています。すなわち、高齢男性の多くに前立腺肥大が起こっているのです。

しかし、前立腺が肥大したからといって必ず症状が生じるわけではありません。そこがこの病気の難しいところです。前立腺肥大症の正確な原因は分かっていませんが、男性ホルモンの減少が関わっているといわれています。高齢化と共に男性ホルモンの分泌量が低下していきます。すると相対的に女性ホルモンが増加することになり、ホルモンバランスが崩れた結果、前立腺肥大症が起こると考えられています。

前立腺肥大症の症状:3つの段階を経て進行する

前立腺肥大症は、以下の3つの段階を経て症状が進行していきます。

第1期:膀胱刺激期
前立腺が肥大し始めるが、尿道への影響はまだ少ない。ただし、日中や夜間に若干の頻尿傾向が出てくることも
第2期:残尿期
前立腺の肥大が進み、尿道を圧迫するため、排尿しても残尿が生じる。それにより切迫性尿失禁が起こるようになる。また日中や夜間の頻尿傾向も強くなる
第3期:尿閉期
前立腺がさらに肥大して尿道を圧迫する。それにより排尿力の低下と尿道の狭窄が起こり、トイレに行っても排尿できず、尿閉状態が慢性化する。また知らないうちに少しずつ尿が漏れていく溢流(いつりゅう)性尿失禁が起きる

前立腺肥大症そのものは、早めに適切な治療を行えば、生命にかかわる病気ではありません。しかし症状が進行し、残尿が増加すると腎機能の低下や腎不全につながることがあります。その状態がさらに進むと生命にかかわる危険な状態となる可能性もあるので、注意が必要です。

前立腺肥大症の進行をとめるには、それぞれの段階において適切な治療を行う必要があります。

前立腺肥大症の治療:基本的に薬物療法からスタート

前立腺肥大症の治療には様々な方法がありますが、大きくは以下の4つに分けることができます。

前立腺肥大症の治療法
分類主な治療法
薬物療法 内服薬や注射薬を使って、排尿障害の改善や肥大の縮小を図る治療法
低侵襲手術 低侵襲とは、患者の体への負担が少ないという意味。内視鏡やレーザーなどを使ってメスによる切開を減らし、体への負担を少なくした手術方法
開腹手術 メスで腹部を切開し、肥大した前立腺を切除する方法。現在はほとんど行われない
物理療法など
その他の治療法
肥大した前立腺を加熱して除去する「温熱療法」、前立腺を切除せず、尿路を確保する「尿道ステント留置法」などがある

これらのうち、症状が進行していたり、緊急の処置が必要だったりする場合を除き、基本的に前立腺肥大症の治療は、薬物療法からスタートします。

また症状の改善には治療のみならず、日々の心がけがとても大切です。日常生活を送る際は以下の点に注意しておきましょう。

  • 尿を我慢しすぎない
  • 便秘にならないようにする
  • 規則正しい生活を心がける
  • 適度な運動をする
  • 適度に水分を摂る(過剰な水分摂取制限はしない)
  • 過度のアルコールは控える
  • 下半身の保温を心がける
  • 毎日、ぬるめの風呂にゆったりとつかる
  • 長時間の座ったままを避ける

前立腺疾患(前立腺肥大症、前立腺がん)について知る

監修プロフィール
堀江重郎先生
順天堂大学大学院医学研究科泌尿器外科学教授 ほりえ・しげお堀江重郎先生

日本Men’s Health医学会理事長。日本抗加齢医学会理事長。泌尿器がんの根治手術と男性医学を専門とし、全ての男性を元気にする医学を研究している。