喫煙と免疫力

喫煙と免疫力

タバコの煙にはニコチン、タール、一酸化炭素など200種類以上もの有害物質が含まれ、これらは喫煙者だけでなく、周囲の人の体にもさまざまな害を及ぼします。ウイルスや細菌、異物などから自分の体を守る抵抗力である免疫力の低下もその1つ。免疫力が低下するとかぜやインフルエンザなどに感染しやすくなる他、発がんリスクも高めます。自身だけでなく、家族の健康を守るためにも禁煙に取り組みましょう。
※この記事は2012年11月のものです。
<目次>
Q1.タバコに含まれる有害物質は?
Q2.タバコを吸うと免疫力が下がるって本当?
Q3.免疫力が低下するとどんな疾患が起こるの?
Q4.タバコの煙は周りの人にも影響を及ぼすの?
Q5.受動喫煙対策はどこまで有効?
Q6.禁煙外来ではどんなことをするの?
Q7.禁煙成功のポイントは?
Q8.家族の禁煙サポート方法は?

Q1 タバコに含まれる有害物質は?

A1 ニコチン、タール、一酸化炭素など

タバコには4000種類以上の化学物質が含まれ、そのうち有害物質は200種類以上。中でも「3大有害物質」と呼ばれるのがニコチン、タール、一酸化炭素です。有害物質は喫煙者が吸い込む主流煙だけでなく、タバコの火の先端から出る副流煙にも含まれています。

【3大有害物質】

●ニコチン
血管の収縮や心拍数の増加を引き起こす。胃の収縮力を低下させる。脳(中枢神経系)へ作用し、ニコチン依存症を招く。
●タール
多くの発がん性物質(ベンゾピレン、アミン類、NNKなど)を含む。呼吸器系疾患やがんと関係が深いと考えられている。一般に「ヤニ」と呼ばれる。
●一酸化炭素
赤血球と結合して体内に酸素を運ぶヘモグロビンの働きを低下させ、体内を酸欠状態にする。血管の内壁を傷つけ、動脈硬化を促す。

Q2 タバコを吸うと免疫力が下がるって本当?

A2 タバコの有害物質が免疫力を低下させます

免疫力とは、ウイルスや細菌、異物などから自分の体を守る抵抗力のこと。「生体の防衛システム」として私たちの体に備わっています。
ところが、タバコに含まれる有害物質が体内に入ると、様々な障害が起こり、免疫力は低下してしまいます。
一酸化炭素が引き起こす慢性的な酸欠状態も原因の1つです。一酸化炭素は煙と共に体内に吸い込まれると、赤血球中のヘモグロビンと結合します。通常ヘモグロビンは酸素と結合し、血液に乗って全身に酸素を運ぶ役割を果たしていますが、一酸化炭素のほうが酸素よりも200倍ヘモグロビンと結合しやすいため、酸素の運搬が阻害され、その結果、慢性的な酸欠状態に至ります。体内で酸素が不十分になると、末端への栄養分の運搬や老廃物の回収機能が衰えます。
その他、タバコの有害物質による次のような作用も免疫力の低下を招きます。

●ニコチンが血管を収縮させ、血流を悪化させる。
●白血球の一種で、免疫に関与する細胞である肺胞マクロファージの抗体産生機能を低下させる。
●免疫を促進するタイプのリンパ球を減少させる。
●唾液分泌を低下させる。
●気管支や肺から異物を外へ吐き出す線毛の働きを低下させる。
●免疫力を高める働きを持つ、ビタミンCを消費する。

Q3 免疫力が低下するとどんな疾患が起こるの?

A3 感染症や発がんのリスクを高めます

免疫力が低下すると病気に対する抵抗力が弱まり、次のような疾患の引き金となります。

●感染症
ウイルスや細菌、異物などを体外に排出することができず、感染しやすくなる。また、重症化もしやすい。かぜ、インフルエンザ、歯周病、中耳炎他。
●がん
喫煙により発がん物質が体内に取り込まれる。さらに、免疫力の低下が発がんのリスクを助長させる。肺がん、食道がん、胃がん、乳がん他。

Q4 タバコの煙は周りの人にも影響を及ぼすの?

A4 主流煙よりも多くの有害物質を含みます

喫煙者が直接吸い込む「主流煙」は、タバコについているフィルター越しに体内に入っていきますが、タバコが燃える時に立ち上る「副流煙」はフィルターを通すことなく、直接周囲の人の体内に入ります。
そのため、副流煙に含まれる有害物質は主流煙よりも多いといわれています。厚生労働省が行った調査では、主流煙を1とした場合に、タールは3.4倍、ニコチンは2.8倍、一酸化炭素は4.7倍にも上ることが分かりました。実際に副流煙を2秒間吸っただけでも心拍数の増加や血管収縮が認められています。
このように、喫煙は本人だけでなく、周囲の人の健康をも脅かします。特に子どもの受動喫煙は免疫力の低下が健全な発育を阻害し、呼吸器系の症状を悪化させたり、知能低下、低身長などの原因にもつながります。
禁煙は自分のためだけでなく、大切な家族や周囲の人のためでもあることをしっかりと覚えておきましょう。

Q5 受動喫煙対策はどこまで有効?

A5 分煙による効果は期待できません

副流煙による受動喫煙の対策として換気扇や空気清浄機の前で吸う人がいますが、有害物質を除去する効果は期待できません。また、ベランダなどで吸った場合でも毛髪や衣類に付着したり、肺に残っている煙が室内で吐き出されることなどにより、有害物質は室内に持ち込まれます。家族の健康を守るためには、分煙で済まそうとせず、禁煙をすることが必要です。

Q6 禁煙外来ではどんなことをするの?

A6 ニコチン依存症の治療を行います

喫煙はニコチン依存が原因で起こる病気であり、医療機関の禁煙外来で治療が可能です。健康保険による治療対象となるのは次の場合です。

●患者自らが禁煙を望むこと
●ニコチン依存症診断用のスクリーニングテストでニコチン依存症と診断された人。
●喫煙指数(1日の喫煙本数×喫煙年数)が200以上の人。
●禁煙治療について説明を受け、文書に同意した人。
ただし、規定の基準を満たした医療機関のみでの適応となりますので、事前に電話等で確認するようにしましょう。
治療は医師による生活習慣改善などのアドバイス(行動療法)と薬物療法。ニコチンパッチによって持続的に体内にニコチンを補給したり、内服薬投与を12週間、5回の受診によって行います。

Q7 禁煙成功のポイントは?

A7 禁煙のコツをつかみ賢く実行しましょう

禁煙を成功させるには、まず「禁煙をする」と決意することが第一歩。そして、仕事の山場など、ストレスが高まりそうな時期を避け、スタート日を決めましょう。
禁煙開始から3日目頃に「吸いたい」という欲求に加え、ニコチンの離脱症状でイライラ感、不眠、眠気、だるさ、集中困難といった症状がピークを迎えます。この時期は仕事や家事などを無理せず、余裕をもって過ごすよう心がけましょう。その後、症状は徐々に治まり、多くの場合、5日から1週間後には離脱症状が消えて禁煙することが楽になります。ですから、ピーク時には「禁煙によるつらさは永遠に続くものではない」ということを思い出し、あきらめずに「もう1日待ってみよう」と考えるようにしましょう。
また、1週間経つと一酸化炭素の蓄積による酸欠状態からも解放され、「呼吸が楽になった」、「肌のつやがよくなった」といった変化も感じることができるようになっていきます。
離脱症状を乗り切った後は、ストレスの気晴らしや酒の席、食後の一服といった習慣的な癖や吸えないことによる喪失感など、「心理的依存」による喫煙の再開に注意しましょう。「1本だったら大丈夫」といった油断が出るのもこの頃。たった1本がきっかけで挫折するケースが多くあります。ニコチンは、依存性が強い薬物。禁煙成功後にしばらく吸わなくても、脳にニコチンの記憶が残っているため、その1本で再度ニコチン依存に陥ってしまいます。
禁煙は生活習慣を見直すよいきっかけにもなります。自分や家族、周囲の人の健康のために、ぜひ成功させましょう。

Q8 家族の禁煙サポート方法は?

A8 こまめに声をかけ禁煙を応援しましょう

タバコがやめられないのはニコチンの依存性のせいであり、禁煙の成功は本人の意志の強さだけでは難しいものです。禁煙には本人だけでなく、家族のサポートも大変重要となります。
例えば、ニコチンの離脱時期にはイライラが募り、家族に八つ当たりすることもあるかもしれません。しかし、「離脱症状であるゆえ」と大目に見て、温かく見守ってあげるようにしましょう。
また、家族皆で頑張っている、という一体感を持たせることも大切です。禁煙期間中は継続的に「頑張ってるわね」、「成功したらお祝いをしましょう」などと、モチベーションを高める声がけをしていきましょう。