ハーブ習慣で 女性の心と体の不調をケア

日ごろから何かしらの不調を感じている女性は多いもの。病院に行くほどではないけれど、ちょっとした不調を何とかしたい、もっと元気に活動したいという人におすすめしたいのが、ハーブです。ハーブを使ったケアにはいろいろありますが、中でもハーブティーはだれでも気軽に取り入れられることから、毎日のセルフケアに最適。そんなハーブの魅力やハーブティーの効果的な飲み方、さらに、女性を悩ます不調とのつき合い方について、医師の橋口玲子先生に教えていただきました。

<目次>
1.ハーブとは。人類と共に長い歴史を歩んできたハーブ
2.心と体に働きかける香りのチカラ
3.ハーブが女性の不調に向くわけ
4.ハーブティーの入れ方・飲み方
5.ハーブは効能だけでなく味と香りで選ぼう
6.おすすめのハーブはこれ!
7.女性の不調と上手につき合うために

ハーブとは。人類と共に長い歴史を歩んできたハーブ

ハーブは健康に役立つ成分を含む植物の総称です。その種類は何千もあり、はるか昔から世界中で病気の治療や予防、けがの手当てなどに利用されてきました。ハーブには抗酸化ビタミンや、植物が自身を守るためにつくり出すフィトケミカル(phytochemical=植物だけが持つ色素・苦味・渋味・香り・えぐみ・辛みなどの成分)が含まれています。実は、現代の西洋医学で用いられている医薬品も、元をたどればハーブから発見され抽出された成分であるものが多いのです。

中世ヨーロッパでは、教会や修道院の薬草園でハーブが栽培され、植物療法が盛んに行われていました。しかし19世紀に入ると、化学薬品に取って代わられるようになり、急速に衰退していきます。ところが20世紀になると、体を部分的にとらえて病気を治療しようとする現代医療のあり方が見直されるようになりました。この流れの中で、ハーブによる植物療法が再評価され、通常の医療を補うために、あるいは通常の医療の代わりとして、主にドイツ、イギリス、フランスなどヨーロッパを中心に普及していきました。
ハーブの大きな特徴は、自律神経系、ホルモン系(内分泌系)、免疫系に作用して、体全体のバランスを整え、体だけでなく心を癒やす効果があることです。また、フィトケミカルは強い抗酸化力を持ち、体の酸化を抑えて細胞の老化を防ぎ、体に本来備わっている自然治癒力を高めてくれます。「抗ストレス」「抗酸化」という現代人のセルフケアの2つのポイントに応えてくれるのが、ハーブといえるでしょう。

心と体に働きかける香りのチカラ

ハーブの利用法は、大きくハーブセラピーとアロマセラピーに分けることができます。ハーブセラピーは、飲んだり食べたりして有効成分を体内に取り込んだり、香りを嗅いだりして効果を得るもの。代表的な方法としては、ハーブティーが挙げられます。一方アロマセラピーは、植物から抽出した精油(エッセンシャルオイル)を使用し、成分を嗅覚、肺、皮膚から吸収するもので、方法としては芳香浴、アロマバス、マッサージなどがあります。

ハーブティーは植物の成分をそのまますべて利用し、精油は植物の芳香成分だけを利用するという違いがありますが、共通するのは香りの力です。
ハーブの芳香成分は、鼻の粘膜でキャッチされ、電気信号に変換されて脳の扁桃核、海馬に伝わり、さらに視床下部へと伝達されます。視床下部は、自律神経やホルモンのバランスをつかさどる非常に重要な器官。視床下部に香りが作用することで、自律神経やホルモンのバランスが整えられます。そして自律神経のうち副交感神経が優位になれば、体の緊張がほぐれ、気持ちが落ち着き、心身共にリラックスすることができるのです。
<香りが作用するメカニズム>
香りは嗅覚を通して脳にダイレクトに働きかけ、感情や記憶を呼び起こしたり、自律神経系やホルモン系を介して体によい影響を与えたりしてくれます。

ハーブが女性の不調に向くわけ

女性の日々のケアにハーブをおすすめしたい理由がいくつかあります。
1つは、ハーブの持つストレス緩和効果です。現代女性の不調の根底には多くの場合ストレスが存在します。脳の視床下部はストレスの影響を受けやすく、強いストレスを受け続けると自律神経の働きやホルモンの分泌が乱れ、心身の様々な不調として現れることになります。この場合、表面に現れている症状を抑えるだけの治療をしても、根本的な解決にはなりません。ハーブは不調の背景にあるストレスに働きかけ、緩和することで全身的に体調を整え、症状を改善に導いてくれます。

 2つ目は、ホルモンバランスを整える効果です。月経前症候群(PMS)や月経不順、月経痛、更年期障害など、女性の不調には女性ホルモンのバランスの変化が関係しているものが多く、男性にはない女性特有の悩みとなっています。エストロゲン、プロゲステロンの2つの女性ホルモンは、女性の体を守る大切なホルモンですが、ストレスや過労、冷えなどの影響で分泌に異常をきたしやすく、特に分泌量が大きく変動する月経前、排卵期、思春期、更年期は不調が起こりやすくなります。ハーブにはストレスや疲れ、冷えなどを改善したり、ホルモンバランスを整えたりする作用を持つものがあり、女性ホルモンの乱れによる不調にも効果をもたらします。

 3つ目は、ハーブの手軽さです。お茶や食品として摂取するハーブのほとんどはセルフケアに使いやすいのがメリット。いつものお茶やコーヒーをハーブティーに置き換えたり、ハーブをちょっとプラスしたりといった摂り方ができます。その点、精油にはやや取り扱いが難しい面があり、質のよいものは価格もそれなりなので、だれもが気軽に使えるとまでは言えません。ハーブのよさを実感するには、毎日の暮らしの中で継続して使用するのが効果的。そこでハーブ初心者にもおすすめなのが、ハーブティーなのです。

ハーブティーの入れ方・飲み方

ハーブティーの入れ方に、難しいことは何もありません。いつものお茶を入れる手順で、分量のハーブをポットやハーブティー用のマグカップ、小鍋などに入れ、熱湯を注いで抽出するだけです。この時、ハーブの香り成分が大事なので、香りが逃げないように必ず蓋をすること。ポットやカップは、あらかじめ温めておくとよいでしょう。分量は、1人分でドライハーブ2~3g(指3本でつまむくらいの量)、お湯200mlくらいですが、もの足りなく感じるならもっと多めにしてもかまいません。抽出時間は、花や柔らかい葉で3分、固い葉や茎、生のハーブなら5分くらいが目安です。
抽出が終わったらカップに移し、まずはその湯気を十分に吸い込んでください。これによりハーブの香り成分(精油成分)が鼻から吸引されます。香りの刺激はダイレクトに脳に伝わり、リラックス効果やスッキリ効果をもたらしてくれます。湯気がある程度消えたら、ハーブティーを口に含み、ゆっくり味わいましょう。
より手軽に摂るなら、ティーバッグを活用するのもよいでしょう。まずは1日1杯を目安に、生活のいろいろなシーンで楽しんでください。

ハーブは効能だけでなく味と香りで選ぼう

健康のためにハーブティーを飲もうと考える人は、それぞれのハーブにどんな効能があるのかが気になるところかもしれません。もちろん、自分の症状に合う、より効果的なハーブを選ぶのはよいことです。しかし、いくら健康によいからといって、好きでないものを無理に飲んでもあまり効果が得られないばかりか、逆に新たなストレスになってしまいます。
種類を選ばなくても、ほとんどのハーブは抗ストレス作用や抗酸化作用を持ちます。特に初心者は、効能に縛られず、自分の好きだと感じる味や香りのハーブを選ぶのが一番です。ただし、種類によっては大量に使用しないほうがよい物や、妊娠中や授乳中、特定の病気の際には控えたほうがよい物もあるので、使用前に注意事項を確認してください。
 また、ハーブは産地や使用部位などが確かな、質のよいものを選ぶことも大切です。丁寧に生産された良質なハーブは、安価な物とは味や香りも違うため、できるだけ専門店での購入をおすすめします。ドライハーブの中には、ポプリなどに使用するために雑貨として扱われている物もあるので注意してください。自分でフレッシュハーブを育てて利用する場合は、観賞用ではなく食用の品種かどうか確かめましょう。

おすすめのハーブはこれ!

数あるハーブの中でも、特におすすめのハーブを紹介します。ここではシチュエーションに合わせて選びやすいように、おおまかにリラックス系・リフレッシュ系に分けましたが、両方の作用を併せ持つハーブもあり、厳密なものではありません。朝、体を目覚めさせたい時にリフレッシュ系を飲み、夜のくつろぎタイムにリラックス系を飲むなど、気分や体調に合わせて、自分なりの飲み方を見つけてください。日中はリフレッシュ系で活動レベルを上げ、夕方以降はリラックス系で心身の緊張をほぐすといったメリハリのある使い方は、不眠に悩んでいる人などに特におすすめです。また、手足の先が冷たくてつらいタイプの冷え症の人は、ストレスによる自律神経の乱れが原因であることが多く、温めるよりリラックスして全身を緩めてあげるほうが効果的です。

ハーブティーは1種類のハーブでも、2~3種類をブレンドしても楽しむことができます。ブレンドすれば、より幅広い効果を得ることができるだけでなく、シングル(1種類)ではあまりおいしく感じられないハーブが飲みやすくなるというメリットもあります。ジャーマンカモミールかレモンバームをベースにして、プラスアルファで1、2種類加えると取り入れやすいでしょう。
●リラックス系ハーブ → ホッとしたい時、不安や緊張がある時、眠れない時に
ジャーマンカモミール
ジャーマンカモミールは、飲みやすく、様々な効果を持つ「万能ハーブ」。冷え、胃腸の不調、かぜ、肩こり、頭痛、不安、緊張、不眠などに。

レモンバーベナ
レモンバーベナは、さわやかなレモンの風味。食欲不振、頭痛、落ち込み、倦怠感などに。

レモンバーム
レモンバームは、クセがなく、ブレンドのベース向き。月経不順、月経前症候群、頭痛、胃痛、落ち込み、かぜなどに。

リンデン
リンデンは上品な甘い香りが特徴。不眠、不安、冷え、動悸、更年期の不定愁訴などに。

パッションフラワー
パッションフラワーは、草木のような素朴な香り。不眠、緊張、不安、抑うつ、片頭痛、更年期の不定愁訴などに。

オレンジフラワー
オレンジフラワーは、柑橘系の甘く華やかな香り。抑うつ、イライラ、不眠、月経前症候群、過敏性腸症候群などに。

●リフレッシュ系ハーブ → スッキリしたい時、集中したい時、気分を切り替えたい時に
ペパーミント
ペパーミントは、清涼感のある香り。吐き気、おなかの張り、胃もたれなどの胃腸症状、落ち込みに。

レモングラス
レモングラスは、レモンに似た甘い香り。胃もたれ、胸やけ、便秘、倦怠感などに。

ローズヒップ
ローズヒップは、酸味と鮮やかな赤色が特徴。月経前症候群、更年期の不定愁訴、皮膚のトラブルなどに。

<女性の不調にはこんなハーブも>
ハーブの中には、ティーとして飲むにはあまり向かないものの、女性の不調に役立つものがあります。例えば、鎮静作用でイライラを鎮めてくれるラベンダー、女性ホルモンと似たような働きを持つブラックコホッシュ、血行改善作用のあるベニバナやヒハツなどです。こうしたハーブは精油やサプリメント、ハーブ飲料、薬用酒などで利用することができます。また、血行促進効果のあるショウガをスライスして紅茶に入れ、ジンジャーティーとして飲むのもおすすめ。ハーブ飲料を紅茶に加えて飲めばもっとお手軽です。

女性の不調と上手につき合うために

最後に、女性に多い不調とのつき合い方について触れておきましょう。先に述べたように、女性の体調には女性ホルモンが大きくかかわっています。月経前症候群(PMS)や月経痛など月経のトラブルはやっかいですが、定期的に月経があるということは、排卵がきちんと行われている証拠でもあります。この時期にはこういう症状が起こりやすいと分かっていれば、先回りして対処できるとポジティブに考えてみましょう。
例えば月経前のイライラがひどいなら、その時期にはあまり重要な予定を入れず、早く帰って休むようにするなどセルフケアでうまく乗り切ることが可能になります。もちろん、そんな時期にはハーブティーを大いに活用してください。また、月経痛や月経不順は、ストレスや冷え、疲れなどで心身に負担がかかっていることを知らせてくれるシグナルでもあり、大きな病気に進む前に生活習慣の見直しの必要性に気づくきっかけともなります。

ホルモンの分泌量はライフステージに応じて変化し、起こりやすい不調も変わってきます。閉経に伴うエストロゲンの分泌量の急激な低下によって起こるのが、更年期の不定愁訴です。この場合も、今はこういう時期だからと分かっていれば、できるだけリラックスを心がけるなどの対処ができ、気持ちにゆとりをもって過ごすことができるでしょう。更年期の不調には、リンデンとオレンジフラワーのブレンドティーがおすすめです。これといった不調がない人も、更年期以降はエストロゲンの減少によりLDLコレステロール値が上がりやすくなったり、代謝が落ちて太りやすくなったりするため、食事、運動、睡眠などの生活習慣に気をつけるようにしてください。
ただし、どんな不調であれ、あまりつらい場合や症状がいつまでも続く場合はセルフケアだけで対処しようとしないこと。医療機関を受診してきちんと原因を確かめ、適切な治療を受けるようにしましょう。
監修プロフィール
橋口 玲子 先生
緑蔭診療所 はしぐち・れいこ橋口 玲子 先生

1954年生まれ。東邦大学医学部卒業。医学博士。内科・小児科医、循環器専門医。神奈川県南足柄市にある緑蔭診療所で、西洋医学に漢方やアロマセラピー、ハーブを取り入れた診療を実践。呼吸法、イメージ療法などストレス緩和法を研究し、セルフケアの指導も行う。著書に『補完・代替医療 ハーブ療法』(金芳堂)、『アロマ&ハーブセラピー手帖』(マイナビ文庫)、『専門医が教える 体にやさしいハーブ生活』(幻冬舎)、『40歳からの幸せダイエット』(講談社)などがある。

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