脳の老化を防ぐ!食から考える脳の健康

乱れた食習慣は脳の老化や病気の原因に!あなたの食習慣をチェック

外食や加工食品が中心の食生活、大量の飲酒や夜遅くに食事を摂るなど乱れた食習慣を続けていると、血液中に糖やコレステロール、中性脂肪が増えたり、高血圧が進行したりして動脈硬化のリスクが高まります。

動脈硬化がさらに進行すると血管が弾力性を失って劣化し、心疾患や脳梗塞、脳卒中などの重篤な病気を引き起こす原因となります。そして、脳血管障害によって脳の血流が妨げられることにより、脳血管性認知症を発症する場合もあります。

生活習慣病は突然発症することはありません。長年の悪しき生活習慣の積み重ねによって発症するため、症状が現れにくく病気を深刻化させてしまいがちです。一度、普段の食事や生活習慣を見直し、少しずつ改善していくようにしましょう。

脳のエネルギー源は、血液中の「ブトウ糖」と「ケトン体」

脳の重量は体重の2パーセントほどですが、全身で使うエネルギーの18~20パーセントも消費します。脳の原動力として重要なブドウ糖は食事から摂取する他、肝臓でタンパク質(アミノ酸)からつくり出すこともできます。そして、エネルギー源としてブドウ糖が足りなくなると肝臓で脂質からケトン体をつくり出し、脳がエネルギー不足にならないよう、常に調節されています。


脳は毛細血管を通して脳細胞に栄養素を取り込みます。脳の毛細血管には、「血液脳関門」という他の組織にはないシステムが備わっていて、脳に必要な栄養素だけがこの関門を通って脳内に入ることができます。脳のエネルギー源であるブドウ糖とケトン体、酸素などはそのまま通過することができるのですが、脂質やタンパク質はそのままの形状ではこの関門を通り抜けることができません。

一方、気をつけたいのがアルコールやニコチン、カフェインなどです。これらも関門をくぐり抜け脳に悪影響を与えるので、過剰な摂取は控えましょう。

ブドウ糖は脳のエネルギー源でも、摂り過ぎはNG!脳の老化を進行させてしまいます

ブドウ糖は脳のエネルギー源となりますが、ブドウ糖の原料になる糖質を過剰に摂り続けると、血管や脳細胞の老化を進める「糖化」を招きます。糖化とは、エネルギー源として消費しきれなくなったブドウ糖が、タンパク質と結合して変性し、AGEs(終末糖化産物)と呼ばれる異常タンパク質をつくり出す現象をいいます。AGEsは一度つくられると分解されず蓄積され、血管や脳細胞のタンパク質にダメージを与え、血管の劣化や脳の機能低下を招く原因となります。
糖質を摂り過ぎると、次のような症状が現れます。
●午後眠気に襲われる。
●甘い物が常に欲しくなる。
●食後、集中力や判断力が低下して、ボーっとする。

これらの症状に心当たりがある場合は、 糖質中心の食事になっている可能性があります。一度食生活を見直してみましょう。

糖質を摂る時は、血糖値が急上昇しやすい菓子やジュースなどに注意

糖質は主に、「単糖類」、「二糖類」、「多糖類」の3種類に区分され、それぞれ血糖値の上がり方が異なります。
甘いお菓子やジュースに使われているショ糖(砂糖)は、単糖類であるブドウ糖と果糖が結合してできています。そのままでは消化・吸収できないため、消化酵素によってブドウ糖と果糖に分解され、脳や全身に運ばれます。ショ糖は、白米などに含まれるでんぷんのように、2つ以上の糖が結合してできている多糖類に比べて分解に時間がかからないため、吸収されやすく短時間で血糖値が上がりやすくなります。

急激な血糖値の上昇は、脳の働きを不安定にします。甘い物を食べる場合、ショ糖を含む甘い物よりも、多糖類のでんぷんを含んだ食品を選ぶとよいでしょう。中でも血糖値の上昇が緩やかな豆類はおすすめです。

食後、短時間で急激に血糖値が上昇する現象を「血糖値スパイク(食後高血糖)」と言い、空腹時の血糖値を測る健康診断などの血液検査では異常が見られないので、食後1~2時間以内に血糖値を測る必要があります。急激な血糖値の乱高下を繰り返すことで動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳梗塞などを引き起こす原因になるので、食事では血糖値が急激に上昇しないように食べ方を工夫しましょう。

タンパク質やビタミン、ミネラルなど、必要な栄養素が不足すると脳はどうなる?

脳に必要なタンパク質やビタミン、ミネラルなどが不足すると、脳内の神経伝達物質をうまくつくり出すことができず、心身に不調が現れます。神経伝達物質は、脳内に入ってくる様々な情報の伝達役を担っており、「うれしい」、「悲しい」といった感情も脳内の神経伝達物資によってつくり出されます。神経伝達物質は、「興奮系」、「抑制系」、「調整系」の3つに大別することができます。

興奮系は意欲や記憶、学習能力をつかさどり、ドーパミン、ノルアドレナリンなどがその代表格です。抑制系のギャバなどは、興奮した脳を鎮めてくれます。そして、調整系のセロトニンなどは、精神を安定させる働きがあります。この3つの神経伝達物質のバランスが崩れると、イライラしたり、落ち込みやすくなったりするなど、心の状態が不安定になります。

脳に必要な栄養素が不足することで起きてしまう、心身の不調とは?

脳に必要なタンパク質やビタミン、ミネラルなどが不足すると次のような症状が現れます。

●タンパク質
皮膚や爪、筋肉など、体をつくる基本的な要素であり、脳の活動に必要な神経伝達物質の材料にもなる。そのため、不足するとセロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質がつくり出せなくなり、集中力ややる気の低下を招きやすくなる。

●ビタミン(ビタミンB群)
ビタミンB群は、脳内で重要な役割を果たしている。特に、ビタミンB6、葉酸、ナイアシンなどは、脳内の重要な神経伝達物質であるセロトニンやドーパミン、ギャバをつくり出すために必要不可欠な栄養素。不足すると、セロトニンやドーパミンが減少して不眠に悩まされたり、新聞や難解な本が頭に入ってこなかったりといった集中力の低下が現れるようになる。
●ミネラル(鉄)
神経伝達物資のセロトニンやドーパミンをつくる上で欠かせない栄養素。特に、鉄は全身に血液を運ぶ役割を担っているため、不足すると脳内の酸素も不足し、疲労を感じやすくなったり、立ちくらみなどの症状が現れたりする。

●脂質
脂質の中でも特にコレステロールは、脳の細胞膜やストレスがかかるとそれに対抗するために分泌されるコルチゾールなどのステロイドホルモンの材料になる。不足すると、脳の機能が低下したり、ストレスを感じやすくなったりする。

脳に必要な栄養素を、効率よく摂取する調理法は?

脳にとって必要なタンパク質やビタミン、ミネラルなどの栄養素を効率的に取り入れることができるよう、調理の仕方や食べ方を工夫しましょう。

●良質な動物性タンパク質
動物性タンパク質には、セロトニンをつくる原料になるトリプトファンが豊富に含まれている。加熱によりトリプトファンが壊れてしまうため、効率よく取り入れるには、生で食べるのが一番。例えば、卵なら卵かけごはんに、牛肉はミディアムレアくらいの焼き方にする。魚は焼き魚や煮魚よりも刺身で食べたほうが効率よくタンパク質を補える。また、豆腐などの植物性タンパク質を摂る場合は、動物性タンパク質を組み合わせるようにする。冷奴にカツオ節をのせたり、納豆にうずらの卵を加えたりすると栄養のバランスもよくなる。
●ビタミンB群
脳の機能アップに特に重要な役割を果たしているビタミンB6は、カツオやマグロ、サケなどに、ナイアシンはタラコやカツオなどに、葉酸はレバーなどに多く含まれている。焼いたり煮たりすると壊れてしまうため、刺身やカルパッチョなど生で食べるとよい。
●鉄分
ほうれん草など植物性の食材に含まれる「非ヘム鉄」は、レバーなど動物性の食材に含まれる「ヘム鉄」に比べると体内での吸収率が低い。非ヘム鉄の食材を摂る場合には、吸収を促してくれるタンパク質やビタミンCを一緒に摂るとよい。
●n-3系の良質な脂質
DHAやEPAなどのn-3系脂肪酸は、サバやイワシ、サンマなどの青魚に多く含まれている。特にDHAは、脳の神経細胞の膜にも含まれる重要な栄養素で、脳の機能アップにもかかわっている。また、しそ油などに含まれるα-リノレン酸も体内でDHAやEPAに変わるため、取り入れるとよい。

一方、摂取に気をつけたいのがお菓子やパンなどに使われるショートニング、マーガリンやマヨネーズなどに含まれているトランス脂肪酸です。脳にも悪影響を与えることが分かっているため、摂り過ぎないように注意しましょう。

急激に血糖値を上げないことが、脳の老化を防ぐ食べ方のコツ

脳の機能を安定させるには、血糖値を一定に維持することが大切です。食事を摂る際には、次のことを心がけましょう。

●精製されていない食品を選ぶ
精製された食品は、血糖値を急激に上昇させやすく、吸収の速度も速い。白米よりは玄米を、パンであれば小麦粉から作られた物より全粒粉で作られた物を選ぶようにする。
●食べる順番を工夫する
ごはんなどの糖質から手をつけずに、食物繊維を多く含み血糖値の上昇を緩やかにする野菜、次に魚や肉料理などの主菜、ごはんの順に摂るようにする。
●よくかんで食べる
しっかりかむことは過食を防ぎ、脳の血流をよくして脳内細胞が活性化する。食べ過ぎは血糖値を上昇させ、肥満などの原因に。

特定保健用食品(トクホ)も、うまく活用しよう

血糖値をコントロールする成分として注目されている「難消化性デキストリン」という水溶性食物繊維は、食事と一緒に摂ると食後の血糖値の上昇を和らげてくれます。この成分が含まれているお茶などのトクホを、食事の際に活用するのも一案です。

脳を若く保つためには、適度な運動や脳への刺激も必要です

脳を健康に若く保つためには、食生活と共に、喫煙や多量の飲酒など、脳の健康に悪影響を与える生活習慣を見直し、次のような習慣を身につけるよう心がけましょう。

●軽めの運動を行う
食後30分以内に歩くと、筋肉に糖が取り込まれるため血糖値を下げる効果が期待できる。また、筋トレなどで適度な筋肉をつけることは、血糖値の上昇を抑制することにもつながる。
●ストレスをためない
ゆっくり入浴したり、アロマを焚いたりするなど、交感神経と副交感神経の切り替えがスムーズになることが大切。リラックスすると、血糖値の安定にもつながる。
●非日常的なことをする
旅行や普段通らない道を歩くなど、日常的ではない感覚を意識して脳に刺激を与えるとよい。
●腸内環境を整える
腸は「第二の脳」といわれるように、腸のトラブルは脳にも影響する。腸内環境を整えるのに有効なみそや漬物などの植物性乳酸菌などを取り入れて、腸内環境を整える。
監修プロフィール
溝口 徹先生
みぞぐちクリニック 院長 みぞぐち・とおる溝口 徹先生

1990年福島県立医科大学卒業。横浜市立大学医学部附属病院、国立循環器病センター勤務を経て、96年辻堂クリニックを開設。03年日本初の栄養療法専門クリニックである新宿溝口クリニックを開設。21年4月より、みぞぐちクリニックとして、東京・八重洲に移転。 『「うつ」は食べ物が原因だった!』(青春出版社)、『「脳の栄養不足」が老化を早める!』(同)など著書多数。

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