コロナ禍の外出自粛で「骨粗しょう症(骨粗鬆症)」に……3~5年後の骨が危ない!予防のためのセルフケア

骨密度が低下して骨がスカスカになる「骨粗しょう症(骨粗鬆症)」は、日本では約1,300万人の患者がいると推定されています。患者の約8割が女性で、60代女性の3人に1人、70代女性では実に2人に1人が発症する身近な病気です。

骨粗しょう症を、「骨折しやすくなるだけで、命にかかわる病気じゃない」と軽く考えていませんか?実は、骨粗しょう症は意外にも生存率を低下させる病気です。しかも、コロナ禍の外出自粛によって、将来の患者数が一気に増加することが懸念されている、今まさに注意が必要な病気なのです。

そんな骨粗しょう症の隠されたリスクと、予防のためのセルフケアについて、整形外科医の中村格子先生に伺いました。

<目次>
1.骨粗しょう症の生存率は、なんと8年で50%!
2.身長が5cm縮む、足の小指をぶつけて骨折……それは「骨粗しょう症」のサイン
3.女性は閉経後にガクンと骨密度が減少! 40歳から定期検査を
4.「骨の強度=骨密度+骨質(こつしつ)」。 骨密度だけが高くてもダメな理由とは!?
5.骨粗しょう症の予防に、食事と運動で「骨活(ほねかつ)」を始めよう!
6.外出自粛に負けない! 家でできるおすすめの運動は?

骨粗しょう症の生存率は、なんと8年で50%!

骨粗しょう症とは、骨代謝(こつたいしゃ)のバランスが崩れ、破骨(はこつ)細胞の働きが骨芽(こつが)細胞の働きを上回ってしまい、骨の密度が低下してスカスカの骨になってしまう病気です。

私たちの骨は一度できあがると一生変わらないと思われがちですが、細胞が常に新陳代謝を繰り返し、新しい骨に入れ替わっています。これを「骨代謝」といい、古くなった骨を壊す「破骨細胞」と、新しい骨をつくる「骨芽細胞」が約5カ月かけて、一定の形と密度を保ちながら骨を再構築しています。大人では、約3~5年で全身の骨が全て新しく入れ替わっているのです。
「実は、骨粗しょう症の生存率は8年で50%といわれています。これは、悪性疾患と同じくらいの生存率。非常に怖い病気であると認識した方がいいと思います」と中村先生。

骨粗しょう症の生存率がそれだけ低い理由のひとつには、骨芽細胞が分泌する「オステオカルシン」というメッセージ物質が、心血管疾患や糖尿病、認知症など全身の病気と深く関係していることがあります。オステオカルシンは、血液を通じて脳や生殖器、筋肉、膵臓などに届けられ、記憶力や筋力、生殖力などを若く保つ「若返り物質」です。骨粗しょう症になると骨芽細胞が減り、分泌されるオステオカルシンも減ってしまうため、全身の老化や病気につながってしまうのです。

身長が5cm縮む、足の小指をぶつけて骨折……それは「骨粗しょう症」のサイン

骨粗しょう症は自覚症状がなく進行する怖い病気ですが、骨粗しょう症を疑うポイントはあるのでしょうか。中村先生は次のように話します。

「年を取ると誰でも少しは身長が縮んでくるものですが、5cm以上縮んだ場合は骨粗しょう症を疑ってください。また、小さな骨が簡単に折れてしまうことも骨粗しょう症のサインです。例えば、柱や家具の角などに足の小指や手の指をぶつけてしまう経験は誰しもあると思いますが、それで骨が折れてしまうような場合は骨粗しょう症の疑いがあります。40代以降は些細なことで小さな骨が折れることが多くなり、やがて大きな骨も折れてくるようになります」。

女性は閉経後にガクンと骨密度が減少! 40歳から定期検査を

ところで、骨は男女共にある臓器なのに、なぜ骨粗しょう症は女性に多いのでしょうか。それには理由があります。

骨密度(骨量)は男女とも20歳頃に最大となり、40代半ばまではほぼ一定に保たれています。しかしその後、男性は緩やかに減少するのに対して、女性は閉経後の10年間で急速に約15%も減少してしまうのです。これは、骨芽細胞の働きを助け、破骨細胞の働きを抑える女性ホルモン「エストロゲン」が閉経で急激に減り、骨量もそれに伴って減ってしまうためです。
「骨量が理想値の70%を下回ると骨粗しょう症と診断されます。70代になると女性の平均値が70%を下回ってきますが、一方で、20歳の時点ですでに骨量が平均値よりも少ない女性の場合、50歳くらいで早々に骨粗しょう症になってしまうのです。40代なのに60代平均くらいの骨量しかない女性もいます。女性は40歳を過ぎたら、5年に1度は自治体などが行う骨密度検査を受け、骨密度を確認するようにしましょう」と中村先生。

「骨の強度=骨密度+骨質(こつしつ)」。 骨密度だけが高くてもダメな理由とは!?

これまで骨の強さは主にカルシウム量を示す「骨密度(骨量)」を中心に考えられてきましたが、近年「骨質」も骨の強度に影響していることが分かってきました。骨質とは、骨の土台となる線維状のコラーゲンのことで、骨密度が正常範囲なのに骨折しやすい人は、骨質に違いがあることが明らかになったのです。骨の強度の30%は骨質が関係しているといわれています。
骨はコラーゲンの網目にカルシウムが沈着してできた、いわば「鉄筋コンクリート製の建物」のようなもの。鉄筋にあたるのが骨質、コンクリートにあたるのが骨密度です。いくら骨密度が高くても、中の鉄筋部分である骨質が錆びて劣化してしまえば、骨はもろくなってしまいます。

骨質が劣化する原因は、タンパク質と過剰な糖が結びついてできた、老化を進行させる物質「終末糖化産物(AGEs)」の増加です。骨の代表的なAGEsは「ペントシジン」で、骨質を示す指標の一つとされています。尿中のペントシジン量を測定することで、骨質の状態を部分的に知ることができるセルフ検査もあるので、骨質を調べたい人は活用してみるのも一案です。

また、骨質を低下させないためにも「40歳を過ぎてからの無理なダイエットはしないで」と中村先生。

「骨の土台となるコラーゲンはタンパク質からできていますが、無理な食事制限ダイエットをすると、体内のタンパク質量が減って骨質も下がり、肌もシワシワになって老けていってしまいます。40代以降はBMIでいうと21.0くらいのキレイに太っている体型が健康で若々しく見える理想体型。運動で筋肉量や骨密度・骨質をキープしながら、“やせる”ではなく “体格を維持する”ことを心がけてください」。

骨粗しょう症の予防に、食事と運動で「骨活(ほねかつ)」を始めよう!

骨粗しょう症を防ぐために、食事と運動で骨を守るセルフケアのポイントを先生に伺いました。

●「骨粗しょう症」を予防する食事
カルシウム・ビタミンDに加えて「アルカリ性食品」を摂ろう
骨密度を増やすには、カルシウムとカルシウムの吸収をサポートするビタミンDを摂るのが基本です。さらに大豆製品・野菜・果物・海藻・きのこといった「アルカリ性の食品」をしっかり摂ることが重要だと中村先生は言います。
「体の酸化を中和するのが、カルシウムやカリウムなどのアルカリ性物質です。カルシウムの最大の貯蔵庫は骨なので、体が酸化してしまうと骨からカルシウムが流出してしまいます。酸化を防ぐアルカリ性の物質をたくさん摂りましょう」。
●「骨粗しょう症」を予防する運動
1日5,000~7,000歩を目標に「ウォーキング」や「ジョギング」を
骨は、長軸の方向に重力刺激が加わることで微量の電流が骨に伝わり、強さが増すといわれています。そのため重力刺激が少ないサイクリングやスイミング等ではなく、重力刺激が加わるウォーキングやジョギングがおすすめです。骨粗しょう症を防ぐ目安は、1日5,000~7,000歩です。また、骨粗しょう症予防には「かかと落とし運動」もよいといわれることがありますが、足底腱膜炎になる人もいるので注意しましょう。

外出自粛に負けない! 家でできるおすすめの運動は?

外出自粛が断続的に続いているこの1年あまり、身体不活動(=運動不足)が常態化したことで、下肢の筋肉量の低下と、全身の骨が入れ替わる3~5年後の骨粗しょう症患者の増加が懸念されていると、中村先生は警鐘を鳴らします。

「本来、筋肉量は加齢に伴い、1年に0.5~1%ほど低下します。しかし不活動状態に陥ってしまうと、たった1日で1年分の筋肉量が落ちてしまうこともあるのです。同時に骨も弱くなります。コロナに打ち勝ったのはいいけれど、外出自粛で運動不足に陥り、体がすっかり弱くなってしまった……ということがないように、密にならずに一人でできるウォーキングを続けたり、家でもできる運動をしたりして、筋力と骨を維持しましょう」。

中村先生おすすめの、家でもできる運動が「足を前後に広げて行うスクワット」です。難しい人はイスの背もたれなどをつかんで行うとよいとのこと。
また、在宅ワーク等で座りっぱなしの人は股関節の前面が硬くなっているので、前後に足を開き、後ろ脚の股関節の前面をしっかり伸ばすストレッチも有効です。

「運動は、運動そのものも大事ですが、“運動をしたくなる体かどうか”も大切です。そもそも下肢の筋力が落ち過ぎてしまっていたり、体が硬くなり過ぎてしまっていたりすると、人は運動自体をしたくなくなってしまうもの。まずはアキレス腱やハムストリング、上半身を伸ばすストレッチをして、運動をしたくなる、運動しやすい体を自宅でつくっておいてください」。

3~5年後に骨粗しょう症にならないためにも、今できる骨活をコツコツ続けて、ずっと動き続けられる丈夫な骨をつくっていきましょう。
監修プロフィール
中村格子先生
Dr.KAKUKOスポーツクリニック院長 なかむら・かくこ中村格子先生

整形外科医・医学博士・スポーツドクター・医療法人社団BODHI理事長・よこはま健康づくり広報大使・JOC専任メディカルスタッフ(体操(新体操))。横浜市立大学医学部卒業後、横浜市立大学附属病院、自治医科大学整形外科等を経て、09年国立スポーツ科学センター医学研究部研究員に。JOC本部ドクターとして、日本代表選手団を数多くサポート、帯同。13~17年、横浜市立大学客員教授として在任。14年、Dr.KAKUKOスポーツクリニックを開院。「健康であることは美しい」をモットーに整形外科医・スポーツドクターとしてトップアスリートを支える傍ら、スポーツと医療の架け橋としてより多くの人の健康で美しい人生をサポートすべく、自身のクリニックのほか、テレビ・雑誌などのメディアでも多数活動。著書に『体のコリがすべて消える 究極のストレッチ』(日経BP)など多数。
Dr.KAKUKOスポーツクリニック https://www.dk-sc.com/
Dr.KAKUKOオンラインクラス
https://dr-kakuko.teachable.com/

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