口唇ヘルペス、正しい知識で早めにケア

免疫力が弱まったときに再発を繰り返します。

単純ヘルペスウイルスによる感染症「ヘルペス」は、ウイルスの種類によって体のさまざまな部位に発症します。中でも最も患者数が多いのが、唇や口の周りに水ぶくれができる口唇ヘルペス。一度感染すると免疫力が弱まったときに再発を繰り返すことが多いので、症状のサインに気づいて早めにケアすること、他人の感染を予防することが大切です。
※この記事は2013年12月のものです。

<目次>
Q1.口唇ヘルペスってどんな病気?
Q2.口唇ヘルペスの症状は?
Q3.どうやってうつるの?
Q4.どんなときに再発するの?
Q5.アトピー性皮膚炎があると重症化しやすいの?
Q6.口唇ヘルペスと性器ヘルペスの関係は?
Q7.口唇ヘルペスと間違えやすい病気は?
Q8.帯状疱疹との違いは?
Q9.口唇ヘルペスの感染を防ぐためには?
Q10.再発を予防するためにはどうすればいいの?
Q11.発症したときに気をつけることは?
Q12.口唇ヘルペスの治療法は?

Q1 口唇ヘルペスってどんな病気?

A1 単純ヘルペスウイルス1型に感染して発症

ヘルペス(疱疹)とは「皮膚や粘膜に小さな水ぶくれ(小水疱)が集まった状態」のこと。一般にヘルペスウイルスによる感染症をヘルペスといいます。ヘルペスがほかのウイルス性の病気と大きく異なるのは、一度感染すると症状がなくなった後もウイルスが体の中にウイルスの形でじっと潜み、生き延びている点です。そして、抵抗力が低下すると潜伏していたウイルスが活性化して増殖し、再発を繰り返します。
ヘルペスウイルスには8種類あり、そのうち、口唇ヘルペスの原因となるのは単純ヘルペスウイルス1型です。単純ヘルペスウイルスには2型もあり、それぞれの特徴は以下の通りです。

●1型
ウイルスが顔の三叉神経節に潜むため、おもに顔や上半身、とくに顔や口唇に症状が現れる。ほかに角膜炎や歯肉口内炎、咽頭炎、ヘルペス脳炎なども起こる。
●2型
ウイルスが腰の部分の腰・仙骨神経節に潜むため、下半身に発症。おもに性器ヘルペスが起こる。

単純ヘルペスウイルスに初めて感染したときは、体のどこにでも症状が出ますが、再発の場合は、1型はおもに上半身、2型は下半身に限定されます。
単純ヘルペスウイルス1型・2型以外の種類としては、水ぼうそうや帯状疱疹の原因となる水痘・帯状疱疹ウイルス、突発性発疹などを引き起こすヒトヘルペスウイルス6型と7型、伝染性単核症を引き起こすEBウイルス、カポジ肉腫が起こるヒトヘルペスウイルス8型などがあります。

Q2 口唇ヘルペスの症状は?

A2 口の周りが赤く腫れ水ぶくれができます

口唇ヘルペスの症状の出方はその人の年齢や体質、体調によって異なります。小児の初感染では、何の症状もなく気づかないケースがほとんどです。大人の場合、4~7日の潜伏期間を経て、唇や口の周りが痛がゆくなった後、3~5ミリ大の水ぶくれやかゆみなどが出ます。発熱やあごの下のリンパ節の腫れ、頭痛、倦怠感などの全身症状を伴うこともあります。再発時の症状の進行は次の通りです。

(1) 前兆として皮膚がピリピリ、チクチクするなどの違和感やかゆみ、ほてりが出る。
(2) 前兆から半日以内に赤く腫れる(ウイルスの増殖が活発な時期)。
(3) 1~3日後、赤く腫れた上に水ぶくれができる。発熱など全身症状が出ることも。
(4) 1週間前後でかさぶたになり、数日で自然に治る。

再発は年1~2回ペースで起こることが多く、通常、再発のたびに軽症化しますが、症状が重くなることもあります。

Q3 どうやってうつるの?

A3 患部を触れた手などから接触感染します

単純ヘルペスウイルスは人から人への接触感染によってうつり、非常に感染しやすいことをまず覚えておいてください。水ぶくれの中には大量のウイルスが増殖しており、そこから次のような経路で感染します。

●患部を手で触れる。
●発症している人が使ったウイルスのついたグラスやタオルから。
●キスをして患部や唾液から。

皮膚が健康な場合でも感染しやすいので注意が必要ですが、皮膚に傷や湿疹があったり、抵抗力が落ちている人が接触すると感染する率が高くなります。
ただし、感染するのはおもに症状が出ているときだけで、ウイルスが神経節に潜伏しているときに感染することはほとんどありません。ごくまれに症状がないときにウイルスが出ていることがありますが、口唇ヘルペスではとくに問題になりません。
昔は幼少期、親子や祖父母と孫など家族間でほおずりやキスをして感染するケースが多く、ほとんどの人が1~4歳までに感染していました。実際、60代以降の日本人の9割以上が単純ヘルペスウイルスの抗体を持っています。ところが最近は核家族化や衛生面の改善などによって、10代の抗体保有率は6人に1人程度です。幼少期に一度感染するとウイルスに対する抗体ができるため、大人になって再発しても軽症で済みますが、大人になって初めて感染すると、重症化するケースが多くなります。

Q4 どんなときに再発するの?

A4 かぜなどで免疫力が低下したときなどに発症

再発は、神経節に潜伏しているウイルスが活性化して起こります。通常、感染した人の体にはウイルスに対する免疫ができているため、ウイルスの再活性化は抑えられています。
私たちの体には本来、侵入したウイルスや細菌などの異物から生命を守るための免疫力が備わっています。ところが何らかの原因で免疫力が落ちると、ウイルスが再活性化して増殖し、神経節から飛び出して神経を通って皮膚や粘膜に広がり、水ぶくれや痛みなどの症状を引き起こすのです。
とくにかぜをひいて熱が出たときに再発しやすいため、「かぜの華」「熱の華」とも呼ばれています。その他、再発のきっかけになるのは次の通りです。
●スキーや海水浴などで強い紫外線をたくさん浴びた2~3日後。
●月経前(排卵後)。女性ホルモンの働きが関係するため。
●精神的ストレスや過労。
●胃腸障害。
●薬剤の服用(抗がん剤、副腎皮質ホルモン剤、免疫抑制剤など)。
●時差があるとき。

Q5 アトピー性皮膚炎があると重症化しやすいの?

A5 重症化しやすい傾向にあります。

アトピー性皮膚炎の人は皮膚を守るバリア機能がうまく働かないと、免疫の異常からウイルスが侵入しやすく、重症化しやすい傾向にあります。そのため、皮膚の広範囲に水ぶくれができてただれ、高熱やリンパ節の腫れなどを伴う「カポジ水痘様発疹症」を起こすこともあります。

Q6 口唇ヘルペスと性器ヘルペスの関係は?

A6 性器ヘルペスは性行為などによって感染

性器ヘルペスは性行為などによって単純ヘルペスウイルス1型、または2型に感染する性感染症の1つです。一般に初感染の症状は次のように進行します。

(1) 2~10日の潜伏期間の後、感染箇所に痛みやかゆみが出る。
(2) 小さな水ぶくれや赤いブツブツ(潰瘍)が多数現れ、ただれや激痛を伴う。高熱や灼熱感、足のリンパ節の腫れが出ることも。
(3) 2~3週間でかさぶたになり、自然に治る。

口唇ヘルペス同様、初感染では無症状のケースも少なくありません。免疫力が低下していると再発し、口唇ヘルペスでは平均年2回ですが、性器ヘルペスでは女性は年8回、男性は年12回と頻繁に繰り返すのが特徴です。お尻や大腿部、肛門周囲などに症状が出ることもあります。性器ヘルペスは20~30代の女性に最も多く、複数の相手との性交渉が一因となっています。
口唇ヘルペスに感染した人とのオーラルセックス(口唇と性器間の感染経路)によって、性器ヘルペスに感染したり、性器ヘルペスの人とのオーラルセックスによって、のどの粘膜に感染してしまうケースも少なくありません。性器ヘルペスは梅毒やエイズなど、ほかの性感染にもかかりやすくします。性交渉の際は必ずコンドームを使用してください。

Q7 口唇ヘルペスと間違えやすい病気は?

A7 口角炎、接触性皮膚炎、固定薬疹、とびひなど

水ぶくれなどの症状はほかの感染症や皮膚疾患などでも起こりやすく、口唇ヘルペスと間違えやすいので注意が必要です。口角炎や接触性皮膚炎、固定薬疹がその代表です。ウイルスや細菌の感染症としては、子どもに多く発症する手足口病やとびひが挙げられます。皮膚科では症状の起こっている皮膚や粘膜の水疱をハサミで取って顕微鏡でみる方法、ウイルスのタンパクを検出する方法、血液検査でウイルスの抗体を測定する検査などで、口唇ヘルペスかどうかを簡単に診断することができます

Q8 帯状疱疹との違いは?

A8 体の片側に発疹が出て発症の多くは一生で1回のみ

帯状疱疹はヘルペスウイルスの1つ、水痘・帯状疱疹ウイルスによって起こる病気です。通常、初感染は1~5歳ごろに水ぼうそうという形で発症し、年月を経て大人になってから帯状疱疹として再発します。発疹が神経に沿って帯状に出るところから帯状疱疹といわれます。とくに多いのが胸からお腹、背中など、胸髄神経節の領域と、顔面の三叉神経の領域です。
帯状疱疹も口唇ヘルペス同様、免疫力が低下したときに発症し、症状は次のように進行します。

(1) 体の右または左の片側の神経に沿って刺すような強い痛みやヒリヒリした感じが数日~1週間続く。
(2) 虫に刺されたような赤い発疹が出る。
(3) 発疹の上に、中央にくぼみのある水ぶくれが多数できる。
(4) 水ぶくれが黄色い膿を持ち、全身症状として発熱することもある。1週間前後でやぶれてただれる。
(5) 発症から2週間でかさぶたとなり、3週間で治癒する。

帯状疱疹の特徴は次の通り。
●発疹が出る前から痛みが出る。夜も眠れないほどの激痛が4~5日続くケースも。
●一生のうちに1回、まれに数回発症。
●年齢が上がるほど発症率が上がる。80代までに3人に1人が発症。

帯状疱疹に何度もかかる場合は膠原病や糖尿病、悪性腫瘍など免疫力に影響を与える疾患を患っている可能性があります。また、皮膚症状が治まった後も強い痛みが3カ月以上続く場合、帯状疱疹後神経痛が疑われます。

Q9 口唇ヘルペスの感染を防ぐためには?

A9 患部に触れず、食器などを共有しない

口唇ヘルペスで最も多いのが、家族間での接触感染です。水ぶくれができているときはウイルス量が非常に多く、感染力が強い時期ですから、症状がなくなるまではほかの人への感染に注意を払うことが重要です。感染を予防するために次のことを心がけましょう。

●患部は極力触らない。水ぶくれを破らないよう気をつける。
●患部を触った場合、すぐに手を洗う。
●感染時に使ったタオルはほかの人と共有しない。タオルはよく洗い、日光でしっかり乾かす。
●感染時に使ったグラスなどの食器はほかの人と共有しない。食器は洗剤できれいに洗う。
●患部や唾液にウイルスが含まれるので、発症時はキスやオーラルセックスは避ける。

単純ヘルペスウイルスは母子感染する危険性があります。妊婦が神経節に単純ヘルペスウイルスを持っているだけでは胎児にはうつりませんが、妊婦が子宮頸部や性器に発症している場合、赤ちゃんが産道を通るときに感染して脳炎を起こしたり、全身に感染して死に至るケースもあります。これらは帝王切開によって予防できます。また、母親に口唇ヘルペスがある場合、感染予防のために母子別室にして授乳をさせないこともあります。

新生児への接触は避けよう

新生児は免疫力が弱いため、単純ヘルペスウイルスに感染すると全身に広がり、重篤な症状が出る恐れがあります。キスやほおずりに限らず、口唇ヘルペスに触った手ですぐに赤ちゃんを触るだけで感染することもあります。キスやほおずりは避け、新生児に触れる前には手をよく洗うようにしましょう。

Q10 再発を予防するためにはどうすればいいの?

A10 過労を避け、バランスのよい食事を心がけて

口唇ヘルペスは免疫力が落ちているときに再発します。再発する頻度は平均すると1年に2回。感染している人はまず、日常生活を見直して自分がどんなときに再発するかを思い起こし、その状況をできる限り避けることが大切です。免疫力を低下させないために次のような生活を習慣にしてください。

●1日3食、栄養バランスのとれた食事を心がける。特にヘルペスの再発を抑制するリジンを多く含む食品(肉・魚介類・乳製品・大豆製品)を摂るように心がける。
●ストレス、過労を避ける。十分な休養をとり、趣味や運動など自分なりのストレス解消法を持つ。
●かぜをひかないよう注意する。かぜをひいたら早めに休息をとり、熱が出ないようにする。
●強い紫外線を避ける。海水浴やスキーなどに行く際は、UVカットの化粧品を塗ったり、帽子などでしっかり紫外線対策をとる。

Q11 発症したときに気をつけることは?

A11 清潔と乾燥を心がけ、予兆が出たら対処を

口唇ヘルペスは再発しても自然に治りますが、その際、水ぶくれの中で繁殖したウイルスは再び神経節に戻ります。通常は徐々にウイルス量が減り、再発しても軽症で済みますが、症状が悪化してウイルスが爆発的に増殖すると神経節に戻るウイルス量も増加します。すると再発頻度が高くなり、症状も重くなるため、発症時のケアが大切です。
症状の悪化を防ぐためには、まず患部の清潔を心がけてください。水ぶくれの部分は水でそっと洗い、タオルで水気を拭き取ります。また、湿った状態にあると症状が悪化し、細菌に二次感染しやすくなりますから、よく乾燥させます。
水ぶくれが破れると細菌に感染しやすくなり、回復を遅らせますから、患部はこすらないよう気をつけます。とくにかぜや花粉症で鼻をかむとき、こすりやすいので注意してください。
水ぶくれがこすれたり、触ったりすることで、手などを介して他人に感染するので、これを防ぐために、マスクの着用をおすすめします。症状が出ているときは無理をせず、十分な休養をとってストレスや疲れをためないよう努めましょう。強い紫外線を避け、炎症を悪化させるアルコール類は控えます。
皮膚の違和感やかゆみなど、口唇ヘルペスの再発の前兆が現れたら、早めの対処が必要です。病院を受診し、患者判断で抗ウイルス薬を服用するPIT(Patient Initiated Therapy)を受けられるように、薬をあらかじめもらうようにしましょう。

Q12 口唇ヘルペスの治療法は?

A12 抗ウイルス薬を使用します

口唇ヘルペスの症状は患部を清潔に保つことで通常、1~2週間程度で自然に治ります。しかし、重症化したり、再発を頻繁に繰り返すと、水ぶくれの部分がただれて痕が残ることがあります。適切な治療をするのが早ければ早いほど症状は軽く、回復も早いので、口唇ヘルペスが疑われる場合はすぐの治療が必要です。
治療の基本は抗ウイルス薬による薬物療法です。抗ウイルス薬には外用薬と内服薬、点滴の3種類があり、症状の程度などによって次のように使い分けます。

●外用薬(軟膏)
アシクロビル、ビダラビン。ごく軽症で再発が頻繁でない口唇ヘルペスに処方。症状がそれ以上広がらないようにする効果がある。
※抗ウイルス薬耐性化の可能性があるため、米国では推奨されていない。
●内服薬
アシクロビル、塩酸バラシクロビル、ファムシクロビル。皮膚の症状だけでなく、神経細胞内のウイルスの増殖を抑える効果がある。
●点滴
アシクロビル。初感染で重症化している場合や免疫不全の基礎疾患がある場合、アトピー性皮膚炎の人でカポジ水痘様発疹症を合併した場合などは入院して点滴の静脈内注射を行う。

治療に外用薬のみを用いることもありますが、原則的には内服薬を併用します。口唇ヘルペスは神経細胞内にもウイルスが増殖しているため、外用薬で皮膚や粘膜の病変だけを抑えることに加え、内服薬で神経節のウイルスの増殖を抑えます。内服薬は予兆が出た段階で服用する(PIT)と回復が早いだけでなく、神経節に戻るウイルス量が減って再発しにくくなります。
口唇ヘルペスは一生つき合っていく病気ですが、抗ウイルス薬の使用と日常のケアによって、再発を予防することが可能です。

抗ウイルス薬の種類

監修プロフィール
本田まりこ先生
まりこの皮フ科 院長 ほんだ・まりこ本田まりこ先生

1973年、東京女子医科大学卒業後、東京慈恵会医科大学大学院皮膚科学教授、共立薬科大学大学院非常勤講師(兼任)などを経て現職。日本臨床皮膚科学会名誉会員、日本性感染症学会名誉会員、日本皮膚科学会功労会員。

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