正しく知って、みんなで予防しよう! 新型コロナ・インフルエンザ対策

Introduction 秋から気を付けたい呼吸器感染症

気温が低くなり空気が乾燥する秋から冬は、かぜやインフルエンザなど呼吸器感染症の罹患率が1年の中で最も高まる季節です。
さらに今年は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行も懸念されています。それぞれの感染症は症状だけでは見分けがつきにくいことも多く、軽い症状であっても急変して重症化する場合もあるので注意が必要です。

Q1 2020年秋冬の新型コロナ・インフルエンザ対策、今から備えておくべきことは?

A1 一人ひとりがセルフケアに努め、感染や重症化を防ぐことです。

新型コロナウイルス感染症は流行の始まりを何とか乗り越えましたが、7〜8月には再び感染者が急増しました。そして、秋からはかぜやインフルエンザの流行シーズンに入ります。現在はとかく新型コロナに目が向けられがちですが、インフルエンザも合併症を起こして重症化する可能性があることにおいては、リスクに変わりありません。私たち一人ひとりがセルフケアに努めて感染を防ぐと共に、かかってしまった場合には重症化に至らないよう適切に対応することが大切です。
一般のかぜ(普通感冒)の約9割はウイルスが原因で、原因となるウイルスはライノウイルス、RSウイルスなど200種以上もあるといわれています。インフルエンザはインフルエンザウイルスの感染によるもので、かぜに比べ症状が強く、流行規模も大きいことから別格に扱われています。インフルエンザに対してはワクチンがあるので、予防策として流行シーズン前に接種しておくとよいでしょう。特に高齢者はかかった場合に重症化しやすいので、接種がすすめられます。接種しても発症することがありますが、重症化のリスクは下げることができます。インフルエンザワクチンは例年10月頃に出荷されるので、クリニックなどに問い合わせて予定を組み、12月までには済ませておきましょう。
一方、新型コロナウイルスは2019年末に登場した新しいウイルスで、現在のところ有効なワクチンはありません。Q3以降に述べるポイントを押さえて、感染予防に努めていきましょう。

column:そもそも、ワクチンってどういうもの?

私たちの体には、ウイルスや細菌などの病原体(抗原)に一度感染すると体内に抗体ができ、いったん抗体ができると同じ病原体にはかかりにくくする仕組みがあります。この仕組みを利用したものがワクチンです。病原体を弱毒化または無毒化してつくられたものや病原体の一部を利用したワクチンを接種することで、ウイルスや細菌に対する免疫(抵抗力)をつけ、病気にかかりにくくするのです。ただし、有効性・安全性を確認しながら行うワクチンの開発は大変難しく、時間がかかってしまうのが現状です。

Q2 自分や家族が感染症にかかった時、まずとるべき行動は?

A2 セルフケアが難しい場合は医療機関を受診しましょう。

発熱やのどの痛みなどのかぜの症状がある時は仕事や学校を休み、外出を控えましょう。かぜの場合、安静にして体を休めれば通常は1週間ほどで回復します。
ただし、息苦しさ、強いだるさ、高熱などの症状が出ている場合は我慢せず、早めに医療機関を受診しましょう。かぜのような症状がぐずぐずと長引く場合、他の病気や合併症を起こしている可能性もあります。また、新型コロナウイルス感染症もかぜの症状と見分けがつきにくいので自己判断で対処せず、医療機関または地域の相談窓口に相談してください(Q4参照)。
医療機関などを受診する際は、あらかじめ電話やメールで症状を伝えておくとスムーズです。咳やくしゃみがある時は、他の人にうつさないようマスクを着用し、咳エチケットを守りましょう。
一般的なかぜの場合、症状がつらければ市販のかぜ薬を利用するのも1つの方法です。かぜ薬は根本的な治療薬ではなく、症状を和らげ、体力の消耗を抑えて自然な回復を助けるためのものです。市販のかぜ薬は説明書などに書いてある用法・用量を守って服用してください。

Q3 感染症によって予防策は違うの?

A3 どの呼吸器感染症も予防策は基本的に同じ。手洗いやうがいを習慣にしましょう。

感染症予防の原則は、ウイルスとの接触を減らし、ウイルスを体内に入れないことです。ウイルスは主に飛沫感染、接触感染するため、次のことを実践しましょう。
●マスクの着用
感染を完全には防げませんが、有効。ウイルスを他人にうつさない意味でより有効です。
●手洗い
石けんを使い10秒もみ洗い後、流水で15秒すすぎます。こすり洗いすることでウイルスはほぼ除去できます。消毒用アルコールを使う場合は、つけた後に手をまんべんなくこすってよく乾かしてください。
●うがい
口腔内を清潔に保ち、のどを潤す効果が期待できます。こまめな水分補給も大切です。
●3密を避ける
換気の悪い狭い空間や密閉された場所では飛沫感染のリスクが高まります。「密閉・密集・密接」を避け、時々部屋の換気を行いましょう。
●温度・湿度の管理
加湿器などを用いて乾燥を防ぎ、適切な温度・湿度を保ちましょう。

Q4 この症状は新型コロナウイルス?検査はできるの?

A4 かかりつけの先生や地域の相談窓口などにまずは電話で相談してください。

新型コロナウイルスは感染しても症状が全く現れない場合があります。特に若い人は無症状か、症状があっても軽い場合がほとんどです。症状だけで新型コロナウイルス感染症と他の病気を鑑別するのは難しく、確定するには検査が必要です。
これまではPCR検査が中心でしたが、迅速に実施できる抗原検査の使用もすすめられています。いずれも唾液や鼻の奥の粘膜などを採取して、「現在感染しているか」どうかを判定します。
これに対し抗体検査は血液を採取して、「過去に感染したか」どうかを判定するものです。
現在はクリニックなどで希望者に対し抗原検査や抗体検査を保険適用外で実施しているところもあります。

Q5 新型コロナウイルス感染症で 重症化しやすい人は?

A5 高齢者や基礎疾患のある人はハイリスクです。

新型コロナウイルスに感染した場合、8割の人はかぜのような症状が続いた後、自然によくなりますが、2割の人は重症化して治療が必要になるといわれています。重症化する人のほとんどは高齢者と基礎疾患(持病)のある人で、これらがうまくコントロールされていない人、透析を受けている人、免疫抑制剤や抗がん剤を用いている人は注意が必要です。かぜの症状が出てから急に悪化し、肺炎に至る例が多いようです。また、喫煙者も重症化しやすいことが報告されています。
当てはまる人は体調の変化によく気をつけ、症状があれば早めにかかりつけ医や地域の相談窓口に、まずは電話で相談するようにしてください。これらの人はインフルエンザなど他の呼吸器疾患においてもハイリスクなため、同様の注意が必要です。また、若い人や普段元気な人でも、中には重症化することもあります。過信して油断しないことが大切です。

Q6 新型コロナウイルス感染症に、 どうやって向き合っていけばいい?

A6 不安や恐怖に振り回されず、みんなで支え合いながら進んでいきましょう。

新型コロナウイルス感染症は生まれてから1年も経たない新しい病気です。いろいろなことが急速に分かってきましたが、まだ分からないこともあり、これからの正確な展開は予想できません。決して楽観視はできませんが、不安や恐怖に振り回されることなく、一人ひとりがよく考え、正確な情報を集めて冷静に行動することが大事です。
まずできることは、Q3のような感染症予防の基本を実践すること。自分が感染しないだけでなく、「誰にもうつさない」という思いやりの気持ちが大切です。自分のためにも他の人のためにも具合の悪い時は無理せずきちんと休み、みんなが互いに支え合う、そんな優しい社会を目指していきましょう。
強い不安からくる過度な行動制限は、ウイルスの感染を防ぐことができたとしても、他のマイナスの事態を招きかねません。注意が必要なことと心配しなくてよいことを見極め、メリハリをつける賢さが必要です。例えばマスクの着用1つとっても、何のためにするのか、どのような状況で必要なのかを理解していれば、適切に着けたり外したりを判断して実行できるのではないでしょうか。
新型コロナウイルスの流行が収束したとしても、ウイルスはこれからも常に存在する可能性があります。ウイルスを許容しながら、社会の機能を破たんさせず、必要な人が必要な時に、必要な医療を安心して受けられることが大切であり、一人ひとりの行動がそれを支えているのです。
十分な睡眠、バランスのよい食事、適度な運動、リラックスを心がけ、体が本来もっている力を落とさないことが大切なのは言うまでもありません。これは全ての感染症予防、病気予防に通じます。今をこれまでの生活習慣を見直す機会と捉え、ここで身につけたよい習慣を今後の生活にも活かしていきましょう。

新型コロナウイルス感染症に関する最新の情報は以下のウェブサイトや各自治体の新型コロナウイルス感染症対策サイトを参考にしてください。
厚生労働省ホームページ
日本感染症学会ホームページ

子どもの新型コロナウイルス関連情報
日本小児科学会ホームページ

column:コロナ禍における 子どもについて 小児科医としての思い

新型コロナの拡大で、子どもたちの生活も一変しました。集団行動や友達との遊びが制限される中、「仲間との触れ合い」という成長の上で非常に大切なことが失われてしまうのはとても心配です。感染に気をつけながらも、子どもにはできるだけのびのびと過ごさせてあげられるような工夫が必要です。

doctor’s Voice

感染予防をきちんと行いつつ、今こそコミュニケーションも大切にしていきましょう。
監修プロフィール
岡部信彦 先生
川崎市健康安全研究所所長 おかべ・のぶひこ岡部信彦 先生

1971年東京慈恵会医科大学医学部専門課程卒業、同小児科。WHO西太平洋地域事務局伝染性疾患予防対策課課長、国立感染症研究所感染症情報センターセンター長などを経て、2012年より現職。新型コロナウイルス感染症対策分科会構成員も務める。