多くの女性が実は悩んでいる !? 女性の尿もれ

Introduction 私はどんな状態?女性の尿もれセルフチェック

尿もれは「国際女性病」と言ってもいいほど、世界中の女性の悩みの種。でも、「恥ずかしくて人に話しにくい」「どこに相談したらいいのか分からない」という女性も多いのが実態です。まずは次のチェックリストで、自分の状態を把握してみましょう。

Q1 女性はもれやすいって本当?

A1 男性よりもれやすいのは本当です。なぜかというと体の仕組みが違うから。

様々な調査から、尿もれをする人は女性のほうが男性よりも多いことが分かっており、40歳以上の女性の約2人に1人は尿もれに悩んでいるとされます。どうして男性よりも女性に多いのか、その理由は大きく分けて3つあります。
●体のつくりの違い
左の図のように、男性の尿道は陰茎内を通るため15〜25センチメートルと長く、曲がっています。それに対し女性は、子宮が膀胱の後ろにある構造上、腟に沿うように延びる尿道は4〜6センチメートルと短くほぼ下向きで真っすぐ。そのため腹圧に抵抗できず、尿がもれやすくなっているのです。
●筋肉量が少ない
骨盤の下には子宮や膀胱、尿道を支え、排泄を担う、骨盤底筋という筋肉があります。女性は筋肉をつくる男性ホルモン(テストステロン)の分泌が少ないため、一般的に男性よりも筋肉量が少なく、さらに加齢や運動不足でも筋力が低下します。骨盤底筋が弱まると尿もれしやすくなります。
●妊娠・出産
妊娠すると子宮が大きく重くなっていき、それを支える骨盤底筋や靭帯(じんたい)に負荷がかかります。さらに出産時には骨盤底筋も靭帯も損傷して骨盤底障害となり、出産直後の人の約90%に尿もれが。ただし傷は修復されるので、尿もれをした人のうち大半は産後1年で治まります。逆に治まらない場合は、重い骨盤底障害の可能性があります。

column:若い女性に尿もれが増えている?

妊娠・出産を経験していない若い世代でも、尿もれに悩む人は少なくありません。その理由として、運動習慣の減少、いすでの生活、洋式トイレの使用などライフスタイルの変化が挙げられます。こうした生活では骨盤底筋があまり使われず、骨盤底が緩んでしまうのです。また、骨盤底が遺伝的に柔らかい人もいて、中には15、16歳から尿もれを経験する人もいます。

Q2 尿もれの原因や症状に違いはあるの?

A2 女性の尿もれの種類は主に3つに分けられ、それぞれ原因や症状、治療法が異なります。

尿もれはいくつかの種類に分けられますが、女性の尿もれの95%は、腹圧性尿失禁、過活動膀胱、混合性尿失禁の3つが占めています。そのうち50%が腹圧性尿失禁、25〜30%が過活動膀胱、20〜25%が混合性尿失禁になります。いずれも原因や症状、治療法が異なりますので、自分がどのタイプかを見極め、適切な治療を受けることが大切です。
●腹圧性尿失禁
お腹に圧力がかかり生じる尿もれ。妊娠や出産、女性ホルモンの減少による骨盤底筋や靭帯の緩みが原因です。
●過活動膀胱
急な尿意と共に生じる尿もれ。膀胱と脳がうまく連動しなくなり起こります。骨盤底筋や靭帯の緩みも一因に。
●混合性尿失禁
腹圧性尿失禁と過活動膀胱の両方の症状が現れ、原因もその両方によります。

Q3 病院には行ったほうがいいの?

A3 尿もれをするからといって必ず病院に行く必要はありません。

Introductionに掲載した尿もれチェックリストで10点以上だった場合は、女性泌尿器科や婦人科、内科を受診しましょう。ただ、病院に行く判断基準として最も大切なのは、生活の質(QOL)を損なっているかどうかです。尿もれのためにスポーツなどの大好きな趣味を諦めたり、尿もれが原因で気分が沈み外出できなくなったりしている場合は、病院での治療をおすすめします。
実は排尿は、気持ちを安定させるセロトニンや心地よさを感じさせるノルアドレナリンといった脳内の神経伝達物質と関連があり、尿トラブルを長く抱えているとうつ病を患ってしまう場合も。そのため膀胱は心の鏡ともいわれています。その不調を軽んじないようにしましょう。尿もれの量が少ない場合はQ5で紹介するセルフケアに取り組んでみてください。

Q4 40代から尿もれは急増するって本当?

A4 本当です。理由として骨盤底障害とGSM(閉経関連性器尿路症候群)が考えられます。

尿もれに悩む女性が40代から増えるのには、次の理由があります。
●骨盤底障害
骨盤底を構成する骨盤底筋や靭帯などは妊娠・出産などで損傷を受けやすく、修復されても、加齢による筋肉量の低下と女性ホルモンの減少により、その損傷が再び現れます。そのため、妊娠・出産後に尿もれが治まっていたとしても、40、50代で再発してしまうことが多いのです。
●GSM(閉経関連性器尿路症候群)
閉経により女性ホルモンの主要な成分であるエストラジオールが減少します。その影響は様々な症状となって現れますが、その中の泌尿生殖器に関係するものがGSMです。外陰部や腟が萎縮し、それに伴って痛みやかゆみ、頻尿、膀胱炎、セックスのトラブルといった症状が現れます。尿もれもGSM症状の1つです。

骨盤底障害とGSMは同じデリケートエリアに発症し、症状も悪化する年代も重なりますが、骨盤底障害は筋肉や筋膜の問題なのに対してGSMはそれよりも表層にある皮膚や皮下組織、粘膜の問題になります。

column:たるんだり乾燥したりするのは 顔だけじゃない !

加齢と共に女性ホルモンが減少するとコラーゲンやエラスチンも減り、皮膚のハリや弾力が失われ、乾燥してしまいます。顔や手は目につく部分ですが、同じように腟まわりの皮膚や粘膜にもたるみや乾燥が起こり、これがGSMの原因になるのです。

Q5 尿もれを防ぐセルフケアを教えて!

A5 セルフケアの基本は、骨盤底筋トレーニングと外陰部の保湿です。

症状が軽度で生活の質を損なっていなければ、病院に行く必要はありません。次のようなセルフケアでしっかり改善を図りましょう。
●骨盤底筋トレーニング
腹圧性尿失禁も、過活動膀胱も、どちらも骨盤底筋を鍛えることが基本の治療法になります。骨盤底筋に限らず筋肉は何歳になっても鍛えることが可能。下記の「骨盤底筋トレーニングの基本動作」を参考に、正しい方法で実践しましょう。毎日行うのが理想です。
●外陰部の保湿
30代までは外陰部も腟も潤っていますが、女性ホルモンの分泌量が大幅に低下する40代以降は、顔と同じように保湿することが大切。入浴後に全身に使える保湿剤を使ってケアしましょう。腟は入り口付近までで、中までは塗らなくても問題ありません。

Q6 生活習慣で気をつけることは?

A6 姿勢をよくし、下半身をしっかり使うこと。食事にも工夫しましょう。

尿もれを防ぐためには、生活の様々な面で改善すべき点があります。主なものとして3つご紹介します。
●正しい姿勢を心がける
骨盤が倒れたり背中が丸くなったりすると、骨盤底の角度が変化して腹圧がかかりやすくなります。背筋を伸ばし、骨盤を起こした姿勢を心がけましょう。
●膀胱を刺激する食べ物を避ける
外出の予定がある時などは、膀胱を刺激する酸っぱい食べ物やカフェイン、アルコール、炭酸入りの飲み物を避けましょう。冷たい飲み物も摂り過ぎには注意。飲む水分の量は、夏は2リットル、春・秋は1・5リットル、冬は1リットルが目安になります。
●下半身を鍛える
毎日1回は骨盤底筋トレーニングを行い、週に2、3回はスクワットなど下半身の運動をするといいでしょう。特別な運動ができなくても、例えば外出時に背筋を伸ばして早歩きをするだけでも効果があります。

doctor's voice

尿もれは治せます。
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監修プロフィール
関口 由紀先生
女性医療クリニックLUNAグループ理事長 せきぐち・ゆき関口 由紀先生

山形大学医学部卒業、横浜市立大学大学院医学部泌尿器病態学修了。医学博士。2005年横浜元町女性医療クリニック・LUNA開設。理事長として世界標準の女性医療と、女性たちによる自助的な医療の実践を目指している。